社会学理論 B-1(2011年度前期)
水曜2限 B201




 

授業で使用したパワーポイントのファイル、復習用の講義ノートを、授業支援システムの中にアップロードしてあります。ともに授業内では配布していないものです。授業支援システムにログインし、ダウンロードして使ってください。




■講義の目的・概要

この講義は、社会学理論をその歴史に沿って概括的に紹介し解説しながら、社会学理論に特有の発想法、用語法について学ぶことを目的とする。

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極めて大雑把にいうならば、社会学(sociology)とは「社会」とはどのようなものであり、どのようにして成り立っているのかを明らかにする学問である。そして社会学理論とはそのための理論、すなわち「社会」とはどのようなものであり、どのようにして成り立っているのかを理解し、説明するための言論(discourse)である。

われわれは誰もが皆、社会との繋がりのなかで生きている。家族がいて、友人がいる。地域共同体があり職場がある。学校がありサークルがある。NGOがあり教会(教団)がある。国家があり国家を超えたネットワークがある。われわれはそのような多様な社会関係のなかで生活しながら、社会とはどのようなものなのか、自分と社会との関係はどのようなものなのか、社会のなかで自分はどう振舞うべきなのかについて自分なりに理解し、時にそれを他人に説明したりするものである。つまり、ことさら社会学を勉強しなくても、われわれは自らの「社会学理論」を知らず知らずのうちに身につけているのである。

この講義でこれから紹介していく社会学者たちの社会学理論が、一般の人々が皆それぞれに身につけている「社会学理論」よりも「優れた」ものであるという保障は、必ずしもない。その判断は、講義を聞いている皆さんに判断していただきたいが、この講義で皆さんに求めたいのは、社会学者たちの構想してきた社会学理論が、皆さん自身の社会に関する理解の仕方とどのように異なっているのか、どのような点で「より良い」ものなのか、また、どのような点で不十分なのか)を見極めていただきたいということである。

もし、専門の社会学者が展開する社会学理論に共通の特徴を指摘するとすれば、それは「客観性の高さ」に求められるのではないかと思われる。社会学理論は、自分ひとりの視界にとどまっていたのではなかなか気づき得ないような、日常生活なかではあまりにも当たり前すぎてなかなか気づきえないような問題に関し、広い視野と高い視座から見た見方提供できるのではないか。そのような視野の広さと視座の高さを、ここでは「客観性」と呼んでおこう。社会学に限らず、「客観性」こそ、学問のもつ最大の武器である。

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社会学理論をわれわれが学ぶ再に必ず留意しておかねばならないのは、これが西洋、特に近代西欧において発生し、発展してきたという歴史である。社会学理論には、そのような起源に由来する地域的・時代的な限定性がつきまとっている。本講義では、そうした社会学理論の限定性についても適宜言及していく。しかし、にもかかわらず社会学理論が日本を含めた非西洋・非西欧社会の理解や説明にとって重要なのは、やはり社会学理論が地域文化を問わず「人間」の営みに関する理論であること、そして特に19世紀以後、西洋近代の社会組織や関係性の原理が、その発祥の地である西欧を超え、広くグローバルなものになっているということに、その理由を求めることができる。

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この講義は、以下の三つの時代ごとに三部構成されている。

第1部は社会学理論「生成の時代」。先ず社会学理論の前史として、17世紀以後の思想史的展開、特にホッブスやロックの政治理論とスミスの経済理論について簡単に紹介する。次に、19世紀のヨーロッパにおける急激な社会変動(特に産業化)の下で、社会学が変化する社会を対象とする学問として発生してきたという経緯を紹介していく。

第2部は社会学理論「体制化の時代」。これは主として、社会学が学問体系として体制化された戦後アメリカが舞台である。1940年代から60年代にかけてのアメリカの社会学理論は、パーソンズを中心とする「機能主義」理論とそれに対抗する諸理論(現象学的社会学やシンボリック相互行為論など)との対抗関係から成り立っていた。

第3は社会学理論「分散化の時代」。ここではヨーロッパの学者を中心に紹介している。1980年代以後、アメリカの学問的ヘゲモニー(支配権)が低下し、社会学理論の動力源の中心は再びヨーロッパに移った。そこでの大きなテーマは、現代社会における社会と人間との関係をどう理解するのかという問題であった。



■講義の受講の仕方

・講義はパワー・ポイントを用いて行う。黒板は補助的に用いるだけである。パワー・ポイントに使用するファイルは、事前に授業支援システムの中にアップするので、受講者はそれをダウンロードし、プリントアウトして授業に持ち込むことが望ましい。それを授業内では配布しない。授業支援システムは法政大学ホームページ上、「在学者の方」から入ることができる。。

・授業の内容をまとめた講義ノートを、同じく授業支援システムにアップする。必要な受講者はダウンロードしてもらいたい。講義ノートはなるべく事前にアップするつもりだが、場合によっては授業後になる可能性もある。復習の際の内容確認のために使用してもらいたい。

・授業内に質問票を配る。質問のある者はそれに記入し、授業の最後にそれを提出すること。また、授業中あるいは授業後に直接担当教員に説明を求めてもよい。時間が許す限り答えるつもりである。


■評価の仕方
 出欠はとらない。よって出席状況は成績に反映しない。合否は最終試験1回のみで決める。なお最終試験は持ち込み一切不可である。


■講義予定(変更の可能性あり)

1. オリエンテーション(今回:講義概要についての説明)

第1部: 生成の時代 −20世紀初頭までのヨーロッパ−
2. 社会学前史 −ホッブス、ロック、スミス(古典的自由主義者たち)―
3. コントとスペンサー −産業化と「社会学」の発生−
4. マルクス −「資本主義」という問題−
5. ヴェーバー −「合理化」と「行為」概念−
6. デュルケーム −「連帯」と「社会」−

第2部: 体制化の時代 −第二次世界大戦後のアメリカ−
7. パーソンズ −規範的統合と社会システム−
8. ミクロ理論T −現象学的社会学とエスノメソドロジー
9. ミクロ理論U −ミードとシンボリック相互作用論−
10. ミクロ理論V −合理的選択理論−

第3部: 分散化の時代 −現代の社会学理論−
11. フーコー −知識・主体・権力−
12. ハーバーマス −公共圏とコミュニケーション―
13. ルーマン −システムと機能分化−
14. ベック −リスク社会−


■参考書

那須壽編『クロニクル社会学』(有斐閣)
新睦人編『社会学のあゆみ』(有斐閣)
新睦人編『社会学のあゆみ −パートU』(有斐閣)
新睦人編『新しい社会学のあゆみ』(有斐閣)
富永健一『社会学の思想』(新曜社)
三溝信『社会学的思考とはなにか』(有信堂)
ランドル・コリンズ(友枝敏雄訳)『ランドル・コリンズが語る社会学の歴史』(有斐閣)



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