3. 社会学理論・学説史研究






社会学には「何々学派」というような理論的なパラダイムが複数存在しています。「マルクス主義」とか「機能主義」「システム理論」、「エスノメソドロジー」や「現象学的社会学」,「合理的選択理論」や「アクター・ネットワーク理論」など,様々です。忘れられかけているものもあれば,人気を得ているものもあります。それぞれを勉強して、その中身を理解するのは、時間がかかり、なかなか骨の折れる作業です。しかも、当然ながら研究水準は日々更新されていきます。ですが、社会学理論の良さは対立するような視点をとるパラダイムが複数乱立し,それが社会に対する様々な見方を提供してくれるところだと考えています。その乱立の中で,どれか一つに視点を立場を限定してしまうのは,あまりに勿体ないのではないでしょうか。この視点の多様性を生かし、社会に対する総合的な理論的枠組なり装置なりを考えていくのが、社会学理論の課題なのだろうと思います。

複雑に錯綜する社会学理論の様々なパラダイムをある程度単純化するために、多少無理やりではありますが、社会学理論全体を通底する問題の枠組みを提示してみましょう。そこには,見方が対立する主要な問題が少なくとも三つあります。

一つは,社会の(ないし世界の)成り立ちに関する問題。世界は人間が日常行なっている解釈によっていくらでも変わりうるという人文学的・解釈学的視点と,それでも変わらない厳然たる現実があり,そのあり方を探ろうとする自然科学的・実証主義的観点です。

二つ目は,社会は人間に内在する動機に発する行為によって変わりうると考える行為論的(エージェンシー的)視点と,人間の意図や行動はそれを超えた社会の外在的な構造によって強く影響を受けると考える構造論的視点です。

三つ目は,近代(モダニティ)をどう捉えるのかという観点です。これに関しては数多くの見方が乱立しています。マルクス主義的なもの,ヴェーバー 的なもの,パーソンズ的なもの,「ポスト近代」的なもの,「後期近代」的なもの,などなどです。

この3つの問題ごとに,対立する視点どうしの関係性を明らかにし,それらを一つの総合的な枠組みの中に位置づけるような総合的理論をつくることは,果たして可能かどうか。それに私は関心を持っています。


[参考文献]
David Inglis (with Christopher Thorpe), An Invitation to Social Theory (Polity, 2019)(この本は傑出した社会学理論入門になっています)




■「モダニティ」の社会学理論
・ 現在進行中の研究プロジェクトです。


タルコット・パーソンズ Talcott Parsons (1902-1979)
・私自身,学部生時代にタルコット・パーソンズの学説研究で卒論を書き,そのことがきっかけで大学院に進学して社会学の研究者を志すことになったので,社会学の理論・学説研究は私にとっての「原点」にあたります

・ タルコット・パーソンズ関連文献 
 - パーソンズ研究の著作論文をまとめました(情報はやや古くなっています)。


大学での講義
・ 「2011年度社会学理論BⅡ
 ―2011年度まで私が教えていた「社会学理論BⅡ」のシラバスです。社会学理論の歴史を現在まで追っていました。昨年度から内容を変えているので、今現在はこの内容の授業は教えていません。

・ 「2020年度理論社会学」
 —2020年度に担当した「理論社会学」の講義のシラバスです。


■社会学理論参考文献リスト
・ 社会学理論全体を俯瞰できる文献のリストです(目下工事中)


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